法定相続分を基準とした分割方法

法定相続分は民法で定められた相続の基本的な割合であり、公平性の判断基準として活用できます。配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者が2分の1、子どもたちが残りの2分の1を均等に分割するのが原則です。ただし、相続人全員の合意があれば異なる分割も可能になります。

特別受益と寄与分の考慮

公平感を保つためには、生前贈与や介護貢献などの事情も検討する必要があります。

特別受益がある場合の調整

生前に多額の贈与を受けた相続人がいる場合、その分を考慮して現金の分割額を調整します。たとえば、長男が住宅資金として1,000万円の贈与を受けていた場合、現金分割時にその分を差し引いて計算することで公平性を保てます。

寄与分による加算

被相続人の介護や事業への貢献が認められる相続人には、その寄与分を現金分割に反映できます。具体的な貢献度を客観的に評価し、分割額に加算します。

分割方法の具体的な選択肢

現金の分割にはさまざまなアプローチがあります。高齢の配偶者には生活資金として多めに配分し、若い世代には教育資金として活用できる金額を配分するなど、それぞれの事情に応じた分け方が可能です。一括での現金分割が困難な場合は、支払いスケジュールを書面で明確にした分割払いという方法もあります。

相続人間での話し合いを円滑に進めるためには、感情論ではなく客観的な基準に基づいて議論することが大切です。専門家のアドバイスを受けながら、良好な関係を維持できます。

上場株式の評価方法

上場株式の相続税評価額は、相続発生日の終値を基準としますが、より有利な価格を選択できる仕組みがあります。相続発生日の終値と3つの平均額（相続発生日の月・前月・前々月）を比較し、最も低い価格が相続税評価額となります。

非上場株式の複雑な評価

非上場株式の評価は上場株式よりも複雑で、会社の規模や保有株式数によって評価方法が変わります。類似業種比準価額方式、純資産価額方式、またはその併用方式を用いて計算します。この評価には専門的な知識が必要なため、税理士などの専門家に相談することが必要です。

名義変更手続きの適切な順序

株式の名義変更は、遺産分割協議で株式を相続する人が決定してから開始します。上場株式の場合は証券会社に連絡し、非上場株式の場合は株式発行会社に直接連絡して株主名簿書換請求を行います。

手続きを怠るリスクと対策

株式の名義変更を放置すると、配当金の受取権や議決権の行使ができなくなり、最終的には株式の権利が消失する危険があります。相続税の申告期限は被相続人の死亡日から10か月以内のため、計画的に手続きを進める必要があります。

株式相続では、評価の複雑さと手続きの煩雑さから、専門家のサポートを受けることが賢明です。とくに複数の銘柄を保有している場合や非上場株式が含まれる場合は、早期に専門家に相談し、適切なスケジュールで手続きを進めることで、相続人全員が納得できる公平な遺産分割を実現できます。

凍結解除に必要な書類と手続き

凍結解除の手続きは、遺言書の有無や遺産分割の状況によって必要書類が変わります。

遺言書がある場合

公正証書遺言または法務局保管の自筆証書遺言以外は、家庭裁判所での検認が必要です。検認済の遺言書、遺言執行者の印鑑証明書、受遺者の本人確認書類、被相続人の戸籍謄本などを金融機関に提出してください。

遺産分割協議書がある場合

相続人全員が署名・実印押印した遺産分割協議書、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書が必要となります。

遺言書も遺産分割協議書もない場合

法定相続分での共同相続となり、相続人全員の署名・実印押印が必要な金融機関所定の書類に加え、戸籍関係書類を提出します。

遺産分割前の緊急時払い戻し制度

遺産分割協議が長期化する場合でも、葬儀費用や生活費のために一定額の払い戻しが可能です。相続開始時の預金額×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分で計算した金額（上限150万円）まで、銀行での手続きのみで引き出せます。

分配の実行と完了まで

必要書類がすべて整うと、預金は解約され、指定した相続人代表の口座に振り込まれます。通常、書類提出から1から2週間程度で手続きが完了します。

代表口座に入金された後は、遺産分割協議の内容に従って各相続人への分配を行います。この分配は遺産分割の一環であるため、税法上の贈与には該当しません。

預金相続の手続きは複雑ですが、各段階での必要書類と手順を理解し、相続人全員が協力することで円滑に進められます。