プラス財産とマイナス財産の調査手順

被相続人の遺品を整理し、預金通帳や郵便物、契約書類などから金融機関や取引先の情報を収集します。預貯金については、各金融機関で残高証明書を取得し、不動産については固定資産税納税通知書や権利証から所在と評価額を確認します。

一方で、借金などのマイナス財産についても同様に調査が必要です。金融機関からの借入れ、クレジットカードの未払い、税金の滞納などがないか、通帳の履歴や郵便物から確認していきます。連帯保証債務がある可能性も考慮し、関連する契約書類の有無も調べることが大切です。

家財道具の評価と整理方法

家具や家電、衣類、貴金属などの家財道具も相続財産に含まれます。相続税の計算では、1個あたりの価値が5万円以下のものは「家財一式」として一括評価し、実務上は10万円から50万円程度で申告することが一般的です。

高額な家財の個別評価

価値が5万円を超える貴金属、美術品、骨董品、高級家具などは個別に評価する必要があります。買取業者の査定価格や専門家の鑑定を参考に、相続開始時点での時価で評価します。

家財一式の取り扱い

一般的な家具や家電、古い衣類などは、まとめて家財一式として評価します。税務調査で指摘されることを避けるため、やや高めの金額で申告しておくことが実務上の対応となります。

調査の結果、債務が財産を上回る場合は相続放棄も選択肢となりますが、一部の相続人だけが放棄すると他の相続人に債務が移るため、家族間での十分な話し合いが必要です。

事前準備でトラブルを防ぐポイント

家財道具の分割を始める前に、すべての相続人が参加できる日程を調整し、現地で実際に品物を確認しながら話し合いを行うことが基本です。電話やメールだけで進めると、認識の違いから後々トラブルになる可能性があります。

高額な家財道具については専門家による鑑定を受けておくことをおすすめします。骨董品や美術品、貴金属類などは、事前に買取業者の査定を受けることで客観的な価値を把握できます。

公平な分割方法の実践

各相続人の希望を聞き取り、重複する品物については話し合いで解決策を見つけることが大切です。同じ品物を複数の相続人が希望する場合は、代替品の提案や金銭による調整を検討します。

希望順位制による分割

相続人全員で家財道具を確認し、それぞれが希望する品物に優先順位をつける方法があります。第一希望から順番に取得者を決めていき、価値に差がある場合は金銭で調整します。

くじ引きや抽選による公平化

思い入れの強い品物について複数の相続人が希望する場合、最終的にはくじ引きや抽選で決めることも解決策の一つです。

処分や保管に関する合意形成

誰も引き取り手がない家財道具については、処分方法についても事前に合意しておくことが必要です。また、遺産分割協議書には家財道具の取り扱いについても明記し、「家財道具一式を長男が取得する」といった具体的な記載を行います。曖昧な表現では後日トラブルの原因となるため、具体的に記載することが大切です。

財産目録の作成と優先順位の設定

調査で明らかになったすべての相続財産を一覧表にまとめ、財産目録を作成します。不動産や預貯金、有価証券、家財道具、債務などを項目別に整理します。それぞれの評価額を記載することで、全体の構成比を明確にできます。

この財産目録をもとに、相続人全員で分割の優先順位を話し合います。居住用不動産のように分割が困難な財産、現金のように分割しやすい財産など、性質の違いを理解したうえで分割方針を決めていきます。

債務処理と税務対策の同時検討

債務がある場合は、その処理方法も含めて分割計画を立てます。債務は法定相続分に応じて各相続人が承継することが原則ですが、遺産分割協議で特定の相続人がまとめて承継することも可能です。

相続税の軽減策との調整

相続税の基礎控除を超える場合は、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの活用も視野に入れて分割内容を検討します。

合意形成のための具体的手法

分割協議では、各相続人の希望を率直に聞き取り、共通点と相違点を明確にします。対立する部分については、複数の代替案を提示し、それぞれのメリットやデメリットを客観的に検討します。

代償分割や換価分割といった分割方法の活用も検討します。不動産を一人が相続し、他の相続人に金銭を支払う代償分割や、財産を売却して現金で分ける換価分割により、公平性を保ちながら分割することが可能です。

家財道具については、金銭的価値だけでなく思い出の価値も考慮し、各相続人の生活に必要な品物を優先的に配分することで、実用性と感情面の両方に配慮した分割が実現できます。