相続手続きのトラブルを回避するために、まずは相続がどのような流れで行われるのか、どのような手続きが必要なのかを確認しておきましょう。
ご家族の状況や財産の内容によって異なる場合もありますが、大まかな流れは次のようになります。

1．死亡届と手続きの開始

ご家族の方が亡くなったら、まず死亡届を出します。その後、年金や保険の手続き、銀行口座の凍結など、様々な手続きが必要です。

2．相続人の確認と遺産調査

誰が相続人になるのかを確定し、故人の財産をすべて調べます。この際に相続放棄・限定相続も含めて検討します。

3．遺産分割協議

相続人全員で話し合い、遺産をどのように分けるかを決めます。

4．相続税の申告と納税

相続税がかかる場合は、相続開始から10ヶ月以内に申告し、納税します。

5．登記手続き

不動産の名義変更など、必要な登記手続きを行います。

相続手続きは、法律の知識が必要で、複雑な手続きがいくつもあります。専門家である税理士にご相談いただくことで、スムーズな相続をお手伝いできるかもしれません。
次のセクションでは、相続手続き中にありがちな相続トラブルの原因を紹介します。

相続トラブルの主な原因

相続トラブルは、家族間の対立や争いを引き起こし、円滑な遺産分割を妨げる深刻な問題です。その主な原因は以下の3つに大別されます。

財産の偏在

• 特定の相続人が遺産の大部分を相続しようとする場合
• 生前贈与や生命保険金の受取人が偏っている場合
• 自宅や事業用資産など、分割の困難な財産が主な遺産である場合

家族関係の複雑さ

• 再婚や養子縁組などによる複雑な家族構成
• 相続人同士の仲の悪さや疎遠な関係
• 介護の負担の偏り

遺言や事前対策の不備

• 遺言書がない、または内容が不明確な場合
• 生前の話し合いや意思確認が不十分
• 相続税対策や財産管理の準備不足

これらの原因は、しばしば複合的に絡み合って相続トラブルを引き起こします。相続トラブルを防ぐためには、これらの原因を理解し、生前から適切な対策を講じることが重要です。具体的には、遺言書の作成、家族会議の開催、専門家への相談などが効果的でしょう。

生前対策の必要性

生前対策は、将来の相続をスムーズに進めるために欠かせません。その重要性は以下の点にあります。

相続トラブルの防止

• 相続人同士の争いを未然に防ぐことができます。
• 遺言書の作成や生前贈与により、財産分配の意思を明確にできます。

相続税の節税

• 計画的な生前贈与により、相続税の負担を軽減できます。

認知症リスクへの備え

• 判断能力が低下する前に、財産管理の方法を決めておけます。
• 家族信託や任意後見制度の活用により、安心した老後を過ごせます。

相続人の負担軽減

• 財産の把握や評価を事前に行うことで、相続手続きがスムーズになります。

生前対策は、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることが大切です。早めに行動を起こすことで、将来の不安を解消し、円滑な相続の実現につながります。

財産の棚卸しと評価

相続対策の第一歩として、財産の棚卸しと評価を行うことが重要です。これにより、自身の資産状況を把握し、相続税の概算や遺産分割の方針を立てることができます。

具体的な手順は以下のとおりです。

資産の洗い出し

まず、ご自身が所有するすべての資産を書き出します。

• 預貯金（銀行名、口座番号、残高）
• 不動産（土地、建物の所在地、面積）
• 有価証券（株式、投資信託の銘柄、数量）
• 生命保険（保険会社名、契約内容、受取人）
• その他（貴金属、美術品、自動車など）

関連書類の整理

資産に関する書類を整理し、まとめておきます。

• 通帳、証券類
• 不動産の登記簿謄本
• 保険証券

資産の評価

相続税の計算に必要な評価額を把握します。

負債の確認

借入金や未払金などの負債も忘れずに確認します。

記録の保管

エンディングノートなどに記録し、家族にも所在を伝えておきます。

このような棚卸しを行うことで、相続人が困惑することなく相続手続きを進められるようになります。

相続人の確認と関係性の整理

相続人の確認と関係性の整理は、円滑な相続を実現するための重要なステップです。正確に法定相続人を把握し、各相続人との関係性を整理することで、将来的な相続トラブルを未然に防げます。

相続人の確認と関係性の整理が完了したら、今度は公平な遺産分割の基礎を作ります。例えば、介護に尽力した相続人や、被相続人の事業を手伝ってきた相続人には、その貢献度に応じた配慮が必要かもしれません。

また、相続人以外の関係者の存在にも注意が必要です。法的には相続権がなくても、道義的な観点から配慮が必要なケースもあります。

相続人の確認と関係性の整理は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家に相談することで、法的に正確な相続人の特定や、複雑な家族関係の整理をスムーズに行えます。

相続の意向確認と家族間コミュニケーション

相続を円滑に進めるためには、被相続人の生前から、相続人同士で相続についての話し合いを始めることが大切です。早めに相続人の意向を確認し、相続方針を決めておくことで、相続発生後のトラブルを防げます。

以下に、相続人同士のコミュニケーションのコツをご紹介します。

オープンな話し合いの場を設ける

• 相続人全員が参加できる機会を作りましょう。
• 公平な議論を心がけ、一人一人の意見を尊重します。

感情のコントロールを意識する

• 冷静に議論を進めることが重要です。
• 感情的になりすぎた場合は、一旦話し合いを中断し、冷静になってから再開するのも一つの方法です。

柔軟な姿勢で臨む

• 相手の立場に立って考えてみましょう。
• 複数の選択肢を用意し、歩み寄りの姿勢を示すことが大切です。

第三者の活用を検討する

• 話し合いが難航する場合は、中立的な立場の人を交えることも効果的です。
• 税理士や弁護士などの専門家、信頼できる親族などに協力を仰ぐことで、客観的な視点で話し合いを進められます。

これらのポイントを意識しながら、率直に意見を交換し、お互いの考えを理解し合うことが重要です。相続方法についても、複数の選択肢を検討し、柔軟に対応することで、円滑な相続につながります。

早めの話し合いと適切なコミュニケーションにより、相続人全員が納得できる相続方針を決定し、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。